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宇久だより

posted: 2026/01/22

中村さんから学んだ宇久島の魚の魅力

取材・記事:西川智基(長崎県立大学 地域創造学部 公共政策学科 3年)


宇久島で働く中村さん

長崎県佐世保市の離島・宇久島。この島で鮮魚店を営む中村友義(ともよし)さんは、自らの経験をもとに、島の魚を全国へ届ける仕事を続けています。店頭販売からオンライン販売、そしてふるさと納税の返礼品まで、魚を扱う仕事を通じて見えてきたのは、島の可能性と課題でした。


船乗りから小売へ ~魚と共に歩んだ人生~

中村さんの船と関わる人生は、15 歳で仕事として船に乗ったことから始まります。
宇久で産まれ、中学卒業後は、宇久高校に行きながら家の半農半漁を手伝うという感じがありましたが、子供の時から漁師の方が自分に合っていると思っていたので父に相談して、自分が船に乗るので、野方地区から平地区に引っ越して新船を造って漁師一本にしてくれと話し合い自分は、日本水産株式会社(以下、日水)養成所に入所し、機関士を専攻していましたが、毎朝のランニングに苦労し、一週間で退所しました。しかし、せっかくここまで来たのだからと、一番早く出航する船に乗せてほしいと会社に相談したところ、調理の部署で良かったら 7 月出航の船があると言われ即答でお願いし、4 月~7 月まで調理の講習を受け出航しました。半年間ベーリング海でスケトウダラ漁を三度経験しました。航海はとてもきついものだったそうですが、「魚で生きていくなら、ここで学んだほうがいい。」と思い、やめずに働き続けました。

その後は南アフリカ・ケープタウンやニュージーランド、南アルゼンチン、北極や南極など、世界各地の海を渡りました。外国で働くようになったのは、「外国も行って見たかったし、外国の見たことのない魚も見てみたかったから」だそうです。

30 歳のとき、父と約束していたため、島に戻りました。


店頭からオンラインへ――時代に合わせた進化

島に戻った当初は、父母弟が漁師をしていたので、東京で学んだ販売スタイルを応用して盛り合わせ中心の販売を展開しました。
店頭販売を主軸にしていましたが、島内の人口が毎年高齢化も進みかなり減りだしたため宇久町が佐世保市と合併し、魚を獲れる範囲が縮小したので、その後は売り上げが減少しました。
そこで転機となったのが、オンライン販売の開始です。

オンライン販売は自ら作った販売サイトを通じて 9 年ほど前にはじめました。
もともと店頭の売り上げのほうが多かったのですが、6 年前には売上構成が店頭とオンラインとで逆転しました。「もしオンラインを始めていなければ、経営は続けられなかった」と中村さんは振り返ります。さらに、ふるさと納税の返礼品として佐世保市に登録したことが大きな追い風となり、安定した収益につながりました。

地元で仕入れる魚は、主にイサキとレンコダイです。地元で仕入れる魚以外にも、サーモン、タコ、などは佐世保から仕入れるのだそうです。
オンラインでは全国から注文が届き、リピーターも多いです。鮮度を最優先し、目利きで魚の鮮度・質を見極め、商品を届けることが信頼につながっています。




島の魚の魅力と変化

宇久島の魚といえば、前述の通りイサキやレンコダイです。丸くて大ぶりなその姿は島の自慢であり、近年も多く獲ることが出来ます。
また、冬にはブリやヒラスも加わり販売のバリエーションが増えます。かつては良質なヒラマサも産卵期に多く獲れたそうですが、近年は獲れる量が落ちているのだそうです。「水温の変化が原因かもしれない」と中村さんは語ります。
自然環境の変化が、漁業にも確実に影響を与えていることが伺えます。

一方で、魚を通じた交流も存在します。
漁師から魚をもらえば、お礼として刺身を返すこともあるそうです。物々交換のようなやりとりは「趣味程度でなら有難い」と中村さんは言います。こうしたやり取りも、島ならではのつながりを感じさせます。魚に限らず、宇久島では食べ物を通した交流が盛んに行われています。島民の食卓には、各々の生産者からいただく野菜や魚が並ぶことが多くみられました。




島の暮らしと未来への思い

鮮魚販売は安定してきたものの、後継者はまだいません。「魚を扱うには経験が必要。大変だが、やる気があれば教えるつもり」と中村さんは語ります。店に置く魚の数を増やすため、現在新しい船を買うことを検討しており、未来を見据え、挑戦は続いています。

そして、中村さんが強調するのは「島で暮らす魅力」です。
島は、子育てに適した環境があり、自然に囲まれて生活できます。
「いいことは自分で見つけるしかない。自分で魅力を見つけて住むことが大事。そうすれば、島で暮らしたいと思う理由が見えてくる。」と語る姿には、島に根を張って暮らす覚悟がにじんでいました。

「この島の魅力が伝わって、これからどうなっていくのか楽しみです」と最後に中村さんは笑いました。
鮮魚を通して築かれた信頼と交流は、島の未来を描く一つの力となっています。




島と魚がつなぐ未来



宇久島の魚は、ただの食材ではなく、中村さんの人生経験のもと、オンラインを介して全国の食卓に届き、島の魚の魅力や自然の価値を伝えています。

オンライン販売利用者が実際に島を訪れるなど、鮮魚をきっかけに島と都市を結ぶ交流が、今後ますます重要になっていくことが推測されます。魚と共に生きる中村さんの姿からは、島の魅力を未来につなぐヒントが浮かび上がってきます。